西村Q太郎トラベルミステリー「池上に眠る男」


やぁ、みなさん。私が日本におけるトラベルミステリーの第一人者の西村Q太郎だ。
頭に家が3本しか生えていなかったり、犬が苦手だったりするヤツではない。推理作家のQ太郎だ。
以後お見知りおきを願おう。さて、この度どういう訳だかある一つのミステリーをこんな僻地のHPに
書き下ろすことになった。舞台は東京の寺町、大田区の池上だ。犯人からの謎の挑戦に、我が愛しの
名キャラクター・九津川警部と相棒の鶴さんはどう立ち向かうかな。じっくり楽しみたまへ!!

*主な登場人物のご紹介*


***第一章「九津川警部への挑戦状」***



警視庁捜査一課の九津川警部宛てに差出人の名前のない手紙が舞い込んだのは、 連続30人バラバラ殺人事件を解決した朝だった。
ここ一ヶ月というものろくに眠ることなくこの事件を指揮してきた九津川は、今はただひたすら 休みが欲しかった。しかし手紙が九津川宛てに届いている以上、放ったらかして帰る訳にはいかなかった。
部下の井関早苗婦警に濃い目のお茶を入れてもらいながら鋏で封を切った。


九津川警部殿


私は池上ではちょっと名の知れた者です。
ひっそりと眠っております。

私を探して下さい。

謎の男



これはどういうものだろうか?単なる悪戯かもしれないが、誘拐が絡んでいるかも知れない。
九津川は信頼のおける部下の鶴井刑事の意見を聞いてみることにした。 鶴井は部下とはいっても九津川より年上のたたき上げ刑事である。
「鶴さんはどう思う?」
「そうですね。これだけで探せと言われても・・・。やはり悪戯ではないでしょうか」
鶴井の言い分はもっともなのだが、九津川には何か引っかかるものがあった。 何故この「謎の男」は自分を指名してきたのだろうか。確実に探し当ててくれるという願いが感じられるの だった。
「警部はこの手紙を信じているのですね」
九津川の様子を察して鶴井が尋ねた。
「鶴さん、私はひとつ池上に行ってみようと思っているのだが」
「・・・解りました警部。私もお供します。この男も池上では有名だと言っていることですし、 行ってみたら何か解るかもしれませんね」
「そうなんだ鶴さん。行ってみて悪戯だと解ったらそれでいいと思うんだ」
もし悪戯ならそれでもいい。それをはっきりさせる為にも九津川と鶴井は池上に向かうことにした。

鶴井は時刻表を出してきた。警視庁のある桜田門から有楽町まで歩くことにして、そこから 京浜東北線を利用し蒲田で東急池上線に乗り換える行程を選んだ。
実は九津川も鶴井も池上も蒲田も降りたことがなかった。そこで九津川は井関早苗婦警に聞いてみた。
「君は池上に行ったことがあるかい?」
「ええ、私の大学時代の友人が住んでいるので訪ねていった事がありますわ」
「ほう、それでどんな街なのかな」
「池上には本門寺というお寺がありますわ。自殺した新井将敬代議士の葬式をやったことで 有名ですが、春には花まつり、秋にはお会式という日蓮の命日が営まれすわ。 バス通りを交通禁止にして全国の檀家さんが太鼓をたたいたり笛を吹いたりしながら 行列して練り歩くんです。中でもまといさばきが見物ですわ」
「君、詳しいんだねえ。もしかして池上の友達っていうのは君の恋人なんじゃないの?」
「嫌ですわ警部。それはセクハラですわ」
早苗の目が笑っていなかったので、九津川と鶴井は逃げるように出発した。

つづく




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