M子の結婚
’91.8




M子とは今では年賀状のやり取りくらいしか交流がなくなちゃったけど
とっても大切な友達なんです。
彼女の結婚はある意味ではとってもあっけなかったけど
でもものすごく困難な状況から産まれたものでもありました。
すみません、今回だけは結婚式のレポートではなくて
彼女の結婚までのお話を書かせて下さい。






M子と知り合ったのは大学一年の時。
私の通っていた学校は学部だけで独立したキャンパスがあり、ユニバーシティではなくて
カレッジって感じのところ。学部公認のクラブ活動は各学科の枠を超えて参加できるけど
サークル活動はだいたいそれぞれの学科のなかでこじんまりと行われていた。
しかし、入学したての私はそんな事しる由もなく、なーーーんの疑いもなく他学科の
サークルに入ってしまった。(別に問題はないんだけどね)
という訳で私は普段授業で顔を合わせるメンバーとサークル活動のメンバーに
全くリンクする部分がなかった。
私の入ったサークルは映像研究サークル。映研ってヤツですね。
この部室のとなりに文芸サークルの部屋があった。
M子はこの文芸サークルの一年生だった。
でも、この時点では私とM子には何の接点もない。
親しくなったのは、私の方のサークルの先輩が持ってきたアルバイト。
期間限定のお仕事で、私も彼女も先輩に連れられてこのバイトを始めたのだった。
この時、M子は私のサークルのある男性と付き合いかけていた。(でも上手くいかなかった)
私も恋人と別れた痛手を引きずっていた。




M子とは同じ大学に通いながら学内では何の接点もなかったのに、どんどん仲良くなった。
縁とは不思議なものだと思う。
バイトが終わってしまっても、ちょくちょく一緒に遊んだ。
私がサークルとは関係なく自主映画を作った時もスタッフをかって出てくれた。
その頃彼女は、新しいアルバイト先でまた難しいタイプの男に惚れて苦しんでいた。
私の方は、付き合っている男が心の病であると知り苦しんでいた。
私はどうする事も出来ずM子にこの事を打ち明けると、彼女は2日後知り合いの看護婦さんに
彼の事を相談する機会を設けてくれたのだった。
M子と二人で(彼には内緒で)この看護婦さんに会いに行き、心療内科を紹介してもらった。




結局私はこの彼とは2年後に別れてしまったが、多分彼は今でも通院していると思う。
(この看護婦さんは相談に行った数ヶ月後に亡くなられました)
この頃M子にはようやく幸せな恋が訪れていた。前の難しい男を追いかけていたころから
そんなM子を見守ってくれたD氏と付き合い始めていた。
大学3年の冬の事だった。
M子から私は衝撃的な告白をされた。
まだ学生でありながら彼女は妊娠してしまったのだ。
D氏は既に社会人。M子の心は産む方に傾いていた。学校も辞めるつもりだった。
でも、結局堕胎した。周囲の反対に負けたのだろうと思う。

M子の体が癒えた春に私たちは東北旅行に出かけた。
春まだ浅い東北は時折小雪の舞う寒さだが、とにかく美しかった。
この後、大学4年生の私たちは就職戦線に突入する。今思えばもっともバブリーな時期
だったにもかかわらず、私たちはなかなか苦戦。私にいたっては12月にやっと
初めての内定を確保する始末。
二人とも不本意な就職となった。(って、私はまだそこに勤めてるけど・・・)




就職してからはなかなか会えなくなる。
私はその頃もやはり恋人の事で悩んでいた。(後の夫ね)
やっぱり悩める時はM子に相談とばかりに電話すると彼女の方も私に話しがあるという。

しかしまあ、会ってびっくり彼女の話の前に、私の恋の悩みなんて吹っ飛んでしまった。

その時彼女は既にD氏と同棲中。
というのも、M子はある日突然住む所を失ってしまったからだ。
彼女のお父さんが家族に内緒で依然世話になった人の借金の保証人になっていたそうだ。
しかし、その人は多額の借金を返せないまま消えてしまったのだった。
今まで当たり前のように家族5人で暮してきた家も何もかも、M子が事実を知った時には
全て無くなってしまった。
M子は三人姉妹の長女。末の妹はまだ小学生だ。
小さなアパートに移り住んだらしいが、その時M子だけは家を出てD氏と暮す事にしたのだった。

私が彼の病気の事で悩んでいた時、いじいじと考え込むだけの私に看護婦さんを紹介
してくれた彼女に、この時私はどうしてあげる事も出来なかった。



それから数ヶ月してM子の結婚パーティーの案内状が来た。
既に入籍は済ませていて、何とお腹の中には赤ちゃんが!

ようやくM子に訪れた穏やかな幸せなのだった。

数年経って、女の子二人のお母さんになったM子は
縁あって愛読していた子育て雑誌のライターの仕事を始めた。

本当に、今では年賀状のやり取りぐらいの間柄だが
私はM子の幸せを願わずにはいられない。




猫屋結婚相談所に戻る

猫屋萬年堂に戻る