K丸さんの二次会(結婚式)
’95.2




会社の一年先輩のK丸さんの結婚式は雪の舞い散るさむーい日でした。
私が行ったのは2次会だけど、後で聞いた披露宴の話の方が面白かったんで
そっちを紹介しちゃいませう。






俺は主賓だ!

K丸さん側の主賓は当時私の上司でもあったS部長。
部長は今まで何度も結婚式に招待され、スピーチも何度も経験した事がある。
この日もどーんと大船に乗ったつもりで安心してみていられる。はずだったのだが…。
挨拶に前に出た部長はその瞬間とんでもなくあがってしまったのだそうだ。
招待客は7〜80人程度、普通の規模の披露宴だ。
部長は前に200人の披露宴でスピーチして、これがなかなかいいと評判だったとか
自分で言っていた。ハッタリだったのか、部長。





俺は主賓!なのに

「え〜、あ〜、う〜」と全然言葉が出てこない。やっと話し出しても何が言いたいのかさっぱり
要領を得ない。片方の手をマイクスタンドにかけ、もう片方はポケットに押し込み、右を向いたり
左をみたりと散々モジモジしながら、多分なんとか話し終えたのだろう。
部長曰く
「横に広い会場は初めてで、どこを向いていいのか解らないままカーッとなっちゃったよ」

しかしながら主賓もスピーチさえ済んでしまえば只の人。
あとはただひたすら美味しい料理を食べれば良い。




挨拶終えて日が暮れて

この日はフランス料理のコース。
プチサイズの白ゴマをまぶしたフランスパンも各席に配られた。
「美味しそうだ」と部長は思ったのだろう。
パンを手に取りその丸さを確認するように丁寧に撫でる。余分なゴマが落ちる。
そして皿の上にもどした。
「一番最後に食べよう」きっとそう思ったのだろう。
大好きなもの美味しいものは一番最後に食べたい、そう思うのは至極当然の心理なのだ。

そんな部長の気持ちをなーんにも考えない一人の大食漢が部長の隣に座っていた。
K課長だ。この人ぁガタイもでかいがよく食うのだ。
コースの皿が進んでいっても一つ残されたまぁるいフランスパン。
「部長はもう年をとって食も細くなったんで、これ、食べないんだな」ときっとそう思ったのだろう。
K課長の手がやおら部長の慈しんだパンに伸び、むんずと握ったかと思うや口の中へ!
その時。




恨みま〜す

「あ゛っ、Kが俺のパン食ったー!!」と会場内に響き渡るような大声が轟いたという。
「俺が、最後に食べようと思って、こうやって丁寧に何度も撫でておいたパンをKが食った〜」
をを、突然新婦側の主賓が訳の分からない雄叫びを!

食い物の恨みは恐ろしいというが、正に部長は今その状態。
食った、Kが俺のパンを食っちゃった!頭の中はそればかり。
そしてK課長の頭の中もパニック。
「え!?部長このパン食べるつもりだったの???」
「何!?このパンて部長が散々撫で回したものだったの???」
今更返そうったってダメだよね。

それにしてもだね、黙って人のパンを食べたK課長もどうかと思うけど、部長も大人なんだから。
壇上の新郎新婦もどうなる事かと思ったことでしょう。

この話は翌日会社で多いに話題になり、その後、隣の部署と一緒にフレンチの食事会をした時も
みんなに「部長、パンお好きでしたよね」とか言われて部長の周りはパンだらけになってしまっていた。



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