K子の結婚パーティー
’94.9




K子は中学時代からの友達で、密かなライバルでもある。
同じ条件をつきつけられた時諦めてしまった私より
ちょっとだけ貪欲でちょっとだけ行動的でラッキーでもある彼女は
くやしいけど永遠に追い越せない存在かもしれない。





いわゆる適齢期の頃

25歳のある晩K子から電話がかかってきた。彼女の結婚を知らせる連絡だった。
「やられた!」っていうのが最初の気持ち。
私だってその頃彼(今の夫)との結婚を必死に考えていたのに
ヤツの煮え切らない態度にイライラしていた頃だったからね。
K子は中学1年の時の同級生で、お互いに引っ越してしまったりで
そんなにしょっちゅう会う関係ではなかったが、要所要所で連絡は取り合っていた。

その電話でお相手の名前を聞いた時、私の中に何か引っかかるものがあった。
で、彼女と高校時代にやり取りしていた手紙の束を開いてみると・・・
あったあった、彼の名前!
お相手の彼は、彼女が高校時代にずーっと憧れていた同級生だったのだ。
大学時代に再会してから付き合っていたみたい。
念願かなってよかったね。



めざせシンプルウェディング

K子は仰々しい結婚式や披露宴は苦手だと言って、同意見の私と大いに盛り上がった。
同じ高校の同じクラブの出身の二人だから集まる人は多いみたいで
友人中心のカジュアルなパーティーをやるとの事だった。
数日後手作りの招待状が届いた。彼女がパソコンで作成したものだ。
便箋に挨拶と用件だけが記されている。シンプルだ。シンプルすぎてあっけないぞ。
シンプル&カジュアル嗜好ここに極まれりって感じっすな。



結婚披露のお値段

ところで、結婚パーティーといえばありがちなのが会費制だ。
本来会費制パーティーは友人などが主宰するものだ。
本人が主宰し客を招待する時は会費制にはしないものらしい。
2次会などが一般化した最近では本人主宰の会費制パーティーなんてのもあるけどね。
そして今回のK子のパーティーはどうだったかというと、
主宰はK子達本人、招待状に費用に関する記載は無い。
これは普通の披露宴と同じだわね。出席する人が御祝儀を自分で考えて包むわけだ。

K子はパーティーをするに当たり会費をいくらにするか決めかねていた。
私にそんな相談をした事があり、その時本来自分達で客を招待するなら
会費制にはしないのではないかという結論に至ったのだ。
これはちょっとした賭けだったと思う。
まず、招待された方の見方として、会費じゃないという事は自分で
祝儀の金額を決めなくてはならずちょっと戸惑うかもしれない。
会場はレストランだ。どんな披露宴になるのかは(だいたい想像できるが)分からない。
御祝儀にまさか3千円とか5千円とか包めないから最低でも大枚1枚は出さなければならない。
結果、披露宴並みとまではいかなくても会費制より痛手が大きくなる可能性が高いという事になる。
次に招待する方。目論見としては数千円の会費で開催するより収益はあるはずだ。
しかし、会費制にしないのでそれは読めない数字でもある。
メンド臭がりやケチな人からは何かしら文句が出るかもしれない。
御祝儀としてもらう以上は当然それだけの振る舞いもしなくてはならないだろう。

とかグチグチ考える私とは違い彼女はとても楽観的なので
「会費制にしなければみんな1万円包んでくれるよねぇ」くらいな構えでいたんじゃないかな。



東京砂漠で迷子

さて、当日。
私と彼女はずーっと仲良くしてきたけど、あくまで個人的なつながりで
一緒に行動していたグループとか仲間ってのがいなかったので
K子はそれを気にして「彼と二人で来てね」と言ってくれた。

会場は西新宿の高層ビルのレストラン。夕方からの開催なので夜景がきれいなことだろう。
私は新宿西口で彼と待ち合わせて会場に向かった。
ちらりとしか見なかったが、あのシンプルな招待状には確か
「住友ビル ○階」って書いてあったと思い向かったのだが探しても探しても店が見つからない。
恐る恐る招待状を確認すると、会場は「野村ビル」だった。
いやもう、ちゃんと確認しなかった私がまったくの馬鹿なんです。はい。
呆れ果てる彼の手を引っ張って野村ビルに走ったのだった。



シンプルウェディングの装い

汗をダラダラ流してようやく会場についたのはパーティー開始の直前。
こんなお馬鹿な私を許して〜と思っていたら他にも
「私間違えて○○ビルにいっちゃったの」と言っている客を発見した。
西新宿の高層ビルって間違い易いのかも知れない。
間もなく新郎新婦が登場、パーティーが始まった。

私はK子が言っていたシンプルな結婚パーティーという話から勝手に
新郎新婦も平服で登場するものだと思い込んでいた。
ところが、K子は純白のウェディングドレスに身を包み、新郎もタキシードなど着ている。
ドレスの裾を長く引いてねり歩くK子の姿に「なんだハデじゃん」という
軽い「裏切られ感」のようなものを感じてしまった私だった。



友達パーティー

この日の招待客の中心はやはり二人の高校時代のクラブ仲間である。
結構ちゃんと活動していたようで、先輩後輩含めて大勢集まっていた。
そうして彼らが料理を食う食う。
ビュッフェ式なので速いもの勝ちで且つ組織が大きいほど強い。
私達二人なんてすぐ食いっぱくれてしまいそうで、
目をギラギラとさせて料理の登場をうかがっていたのだった。

私は団体行動が嫌いで友達もグループで付き合うと必ず気に入らないのが
一人や二人出てくるので、もっぱらK子との関係のように個人的な付き合いが多い。
だから私のようなものがこういうパーティーをしようとしても
中心となって盛り上げる集団が存在しないし、第一人数が集まらない。(T_T)
別にだからといって無理矢理集団に混ざろうとも思わないのだが、
この日のパーティーの盛り上がりを見ていると、こういう付き合いが出来たらどんなにいいだろう
ってちょっとだけ思っちゃった。



後日談

さてさて、パーティーから数ヶ月経って私はK子の新居に遊びに行った。
その時彼女に「シンプルだっていうからてっきり平服なのかと思ってたよ」と言ってみると、
「私だってそう思ったけどさ、やっぱりドレスが着てみたかったんだよ」との答え。
余りにも明解で目から鱗が落ちる思いだった。
そうだよね。そりゃあ、私だって来てみたいよウェディングドレス。
変に肩肘張って「シンプルにやる」とかいう言葉に囚われて自分の欲求を見失うときっと後で後悔する。
こういう事をさらりと言ってしまうからK子にはかなわないよ。

因みに彼女は私が出席したパーティーの前に、普通の結婚式場で神前式で挙式をし
打掛とドレスで親族向けの披露宴も普通にしていた。
結婚前に私たちが熱く語りあった理想の結婚式象って簡単じゃないのだね〜と
妙に納得してしまった私だった。



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